【認知的不協和理論】日本型ファシズムの成立【心理的メカニズム】――②「保守派」と「リベラル」の【脳の構造】の違い。
「保守派」と「リベラル派」の違いはどこから生まれてくるのか?
【認知的不協和】『ピラミッド思考』と『フラット思考』
人は生まれたときから、“ピラミッド支配構造”の管理競争社会の抑圧(ストレス)の中で生きていかなければならない。その中で様々な【認知的不協和(矛盾)】が生じてくる。
《古い認知(ピラミッド思考)》管理・競争・支配・服従
「競争に勝たなければならない」「強くなければならない」「負けたら生きる価値がない」「失敗は許されない」「レールを外れたり、逃げたら負け」「規則ルールを守らなければならない」「親(先生・上司)の言うことは絶対。反抗してはならない」「皆と同じでなければならない」「国家・組織に忠誠を誓うのは当然」「男らしく、女らしく」⋯など
その抑圧が強まる中で「理想の自分」と「現実の自分」、「自分の価値観」と「社会の価値観」、「自分がやりたいこと」と「親がやらせたいこと」などの様々な不協和が拡大し、心の中に不安・恐怖・苦痛・後悔・罪悪感・不全感・劣等感などが増大していく。
認知1;《社会的抑圧・同調圧力》規則の絶対化、競争に勝たなければならない。皆と同じでなければならない。
認知2;《理想の自分》他者に勝つ、成功、褒められる、皆に認められる。強い、美しい自分。
認知3;《現実の自分》他者に負ける、失敗、怒られる、皆に否定される。弱い、醜い自分。
この認知的不協和の中で、様々な問題が生まれてくる。
ピラミッド支配構造の中で社会的抑圧・同調圧力が強まれば強まるほど、承認欲求や優越欲求(攻撃欲・支配欲)が高まり、その鬱屈のはけ口として、弱者への虐待やいじめやパワハラやセクハラや差別、誹謗中傷、非行や自殺や精神的な病気、また、不正や嘘や詐欺やカルト宗教や戦争が蔓延する。
そして、やがてその『負のスパイラル』の中で『古い認知(ピラミッド思考・縦社会・権威の絶対化)』に疑問を持った者の中から、暴力の連鎖を断ち切るために『新しい認知(フラット思考・横社会・自由と平等)』が生まれてくる。
《新しい認知(フラット思考)》自由・平等・協調共生
「“競争”より“ゆとり”」「1番でなくても良い。失敗しても良い」「自分の意見を言っても良い。批判しても、反抗しても、逃げても良い」「甘やかしても良い。個性・自主性の尊重。生きる力・自己肯定感(尊厳)の育成」「自由・平等。格差是正。富の再分配」「経済成長・開発より人権尊重・自然保護。持続可能社会の実現」「性教育推進。体罰禁止。死刑廃止⋯」など
その『ピラミッド思考』と『フラット思考』の対立の中で、自分の“行動”を正当化するために『古い認知』を絶対化しようとする「保守派」と、その『古い認知』を懐疑し、『新しい認知』を取り入れ、改革していこうとする「リベラル派」に分かれていく。
ピラミッド構造社会(縦社会)=権威を絶対化し、既得権益を守り、国旗国歌・靖国神社を強制しようとする「保守派・御用学者・ネトウヨ・改憲派」に対して、その構造を改革し、権力者の責任を追及し、フラット構造社会(横社会)=自由・平等・人権尊重・差別解消・協調共生・自然保護・平和主義を目指そうとする「リベラル派・護憲派」に分かれる。
国家・権力者と自分を同一化しようとする「保守派」と、国家から自立しようとする「リベラル派」に分かれる。
その「保守派」と「リベラル派」に分かれる原因はどこから来るのか?
【脳の構造】「保守派」と「リベラル」の違い
英ロンドン大の研究によると
“リベラル派であるほど『前帯状皮質』の灰白質の容積が大きく、保守派であるほど『右扁桃体』の容積が大きい傾向があることがわかった”
“『前帯状皮質』は複雑性の理解に関連しており、大きい人ほど不確実性や対立への認容性が高く、目新しいものや不確定さを追求する”(→リベラル)
それに対し
“『扁桃体』は恐怖心の処理に関連しており、これが大きい人ほど、反感や脅すような表情に敏感で、危機的状況・悪いことが起きそうな状況に対して身体が攻撃的に反応する傾向がある”(→保守派)
www.afpbb.comその【脳の構造】を図で表してみると、↓のような傾向があると言える。
つまり、「保守派」は周囲の脅威に敏感で、自分の存在を守ろうとする防衛本能(不安・恐怖)から、集団主義・権威主義・全体主義・排外主義的な行動をとりやすい。縁故主義・友達優遇・地位保身に走り、規則の絶対化・家父長制・男尊女卑・夫婦同姓・スパイ防止法・厳罰化・軍備増強などを主張し、他者に強制し、異質者を攻撃・排除することで仲間意識を高め安心しようとする。
それはつまり、『問題』が生じたとき、あるいは『脅威(不安・恐怖)』に襲われたとき、『認知的不協和』が拡大したときの脳の反応と、それにどう対応し、どう行動するかによって、「保守派」と「リベラル派」に分かれる、と言える。
【認知的不協和】『他責思考』と『自責思考』
認知的不協和が拡大したとき⋯、失敗、敗北、挫折などの自分の思い通りに行かないとき、問題や事故が起こったとき、どのようにしてその不協和を解消しようとするか?
①『ピラミッド支配構造』を絶対化し、国家・権力者と同一化し、「自分は間違っていない。他者が悪い。誰かの陰謀だ」と思うのか、
②『ピラミッド支配構造』を懐疑し、弱者・反対者と同一化し、「自分は間違っていた。行動を改めよう」と考えるのか。
それはその人の《脳の構造》によって決定されると言って良い。
それが地球温暖化、公共事業、五輪万博IR・原発・リニア・辺野古埋立、“LGBT法”や“夫婦別姓”への対応になって表れる。
それが「保守派」と「リベラル派」、あるいは「改憲派」と「護憲派」に分かれる原因となる。
つまり、それは言い換えると、人間は昔から、どの時代も、どの地域・国でも、どの宗教・政治体制でも、「保守派」と「リベラル派」に分かれている(分けることができる)と言うことができ、そして、それは『脳の構造』に依存している。
【脳の構造】『理性』と『本能』の関係
脳の成長と『理性』と『本能』の関係
脳は「知性・社会性等」を司る『理性』と、「感情・欲望等」を司る『本能』に分かれていて、『本能』から湧き出る「感情・欲望」を『理性』が制御コントロールすることによって、 人は思考・判断・決定し、行動を起こす。
『本能』から湧き出る、「○○が欲しい」「△△をしたい」とか、「他者に勝ちたい」「金持ちになりたい」というような《感情・欲望》に対して、“その目的を達成するためにはどうしたら良いか⋯” “今これをしたらどうなるか⋯”など、様々な選択肢の中から『理性』が客観的・俯瞰的・多角的に見て考える。
そこで「今は必要ない」「身体に害をなす」 などと欲望や感情や行動を抑制したり、「他者に迷惑をかけた」「失敗した」などと過去の行動を反省し、もう二度とやらないように注意したり、逆に 「こうすれば解決する」「こっちの方法が良い」などという意欲・創意・工夫が出てくる。
脳の発達ー「自立するということ」
子供の頃は『大脳辺縁系(本能)』の比重が大きく、生きていくためには、「親に守ってもらいたい。甘えたい。 構ってもらいたい」という思いで一心だったのが、思春期(反抗期)の頃から『前頭葉(理性・抑制機能)』が発達するに連れ、視野を広げ、自分で生き方を判断・選択できるようになり、親の「命令・期待」に対して自分の「意志・信念」を守ろうとする《自立心》が生まれてくる。
遊びや勉強など、社会で生きていく中でいろんな興味や疑問を持ち、冒険や試行錯誤、失敗や挫折をくり返しながら、危機や困難にぶつかった時、「どうしたら解決できるか?」という、いろんな選択肢や可能性を“柔軟”に広げることができるようになる。
そうして人は、経験の中で前頭葉(抑制機能・葛藤)が発達していくことで『自立』していく。
◉自立とは
・依存先を増やす
・生きる選択肢を増やす
・自分を客観的・俯瞰的に見ることができる
・相手の立場に立って考えることができる
・自分の行動を抑制できる
しかし、その脳の成長(思考の深さ・柔軟さ)には個人差がある。
大人になっても、一面的・短絡的思考で、善悪二元論・白黒思考でしか物事を捉えられない人、規則ルールを絶対化し、それを人に強制しようとする人、相手の立場に立って考えられず、すぐにキレる人、常に自分の利益を追い求め、他者には厳しく規律を求めるのに、自分の欲望・行動を抑制できない、自分の責任を認められず、すぐに他者に責任転嫁しようとする人もいる。その個人差はどこから来るのか?
神経伝達物質バランスの異常
その「理性」と「本能」の関係(脳神経ネットワーク)を形作っているものは“神経伝達物質”である。
そして、その神経伝達物質のバランスは『遺伝的要因』と『環境的要因』で決まり、その中でもストレスへの耐性を決める要因として幼少期の育った“環境”が大きく影響し、特に《不適切な養育(マルトリ)》によって『脳の構造』が大きく変わってくる。
人間は『強いストレス』がかかったり、『日常的・慢性的なストレス』がかかり続けると、身体がそれに反応し、神経伝達物質のバランスが変化する。
ストレスがかかると、ドーパミン、ノルアドレナリンが過剰分泌され、セロトニン欠乏が起こる。その反応は、本来、脳を覚醒させ、集中力・判断力を高め、やる気・意欲・闘争心を向上させる。それは危機に対応するための『防衛本能』であるが、一方で、それが慢性的に続くと「不安・恐怖」を感じる『扁桃体』が活性化され、過敏になる。
そうすると、ちょっとしたことでストレスホルモンである「コルチゾール」の分泌量が増加し、その濃度が上昇するにつれて、徐々に脳の神経細胞の活動が低下し、海馬が萎縮し、前頭葉の機能が低下し、感情の制御ができなくなる。
そのことが、理性的・合理的・抑制的な判断ができなくなり、すぐにキレたり、非行に走ったり、自殺する原因となる。
よく犯罪を起こした人⋯体罰・虐待・あおり運転・窃盗・性犯罪・レイプ・不正汚職事件など、「覚えていない。記憶にない」と否認し、嘘を付き、「自分は悪くない。相手が悪い。秘書が勝手にやった。誰かが自分を陥れようとしている」と、責任を他者になすりつけ、自分の責任を矮小化ようとする。
それは
1:前頭葉の(認知・抑制)機能低下
2:扁桃体(不安・恐怖)の過敏・暴走・機能異常
3:報酬系(線条体・側坐核)の活性化・暴走・機能異常
4:(短期的な記憶や情報を制御する)海馬の損傷
⋯
などの脳のネットワーク・バランス異常が影響していると考えられる。
そのために、自分の行動を客観的・俯瞰的に認識できなく、行動を反省し、欲望を抑制できなくなっていると同時に、都合の悪い記憶を消し去り、都合の良いように書き換える。現実と妄想・願望の区別がつかなくなる。
『感情・欲望』が暴走する中で、自分の行動を正当化するために平気で嘘をつく“サイコパス”になる。嘘をつくことに葛藤がなくなり、嘘と現実の区別がつかなくなり、罪悪感や良心の呵責がなくなる。
息を吐くように嘘をつく。嘘をついているという自覚がなくなる。
『サイコパス』と【脳の構造】
「サイコパス」は反社会性パーソナリティ障害として分類され、良心の呵責・罪悪感・共感性の欠如といった特徴がある。
サイコパス傾向が高いほど嘘をつく際の反応時間が速い傾向にあり、また葛藤の検出などの心理過程に関わるとされる『前部帯状回』の活動が低いことが明らかになりました。
サイコパスは、ためらうことなく半ば自動的に嘘をついてしまう傾向があり、その脳のメカニズムとして『前部帯状回』の活動低下がある。
サイコパスの大きな心理的特徴として「・共感性が低い ・衝動性が強い ・攻撃性が強い」というのがある。
『腹内側前頭前野』と『報酬系』の結びつきが弱いと、報酬を目の前にするとドーパミンが多量に放出され、テンションも上がりやすい。なおかつ感情の抑制機能も弱い。
これらのことからサイコパスは報酬を目の前にした時、人一倍衝動的になるのではとないかと考えられている。
サイコパスは非サイコパスの対照群と比較して、脳の『線条体領域』が平均で約10%大きいことが判明した。これまでの研究で、サイコパスの脳では線条体が過度に活性化していることが指摘されていたが、その大きさが行動に及ぼす影響について決定的なことは分かっていなかった。
サイコパスとは一般的に、自己中心的で反社会的な性格をもつ人物と定義される。彼らは通常、自分の行動に対する後悔の念の欠如、他者への共感の欠如、そして犯罪傾向によって特徴付けられる。
線条体は、大脳皮質と視床・脳幹を結びつけている大脳基底核の一領域で、運動および行動の企画、意思決定、動機づけ、強化、報酬の認識など、認知に関する多面的な調整を行う。
『線条体』が活発な人は、刺激欲しさにスリルある行動に出たり、衝動的な行動を起こしやすい傾向にある。
しかし通常、線条体は大人に成長するにつれて小さくなる。この事実から、サイコパスの脳は、子供から思春期にかけて正常に発達しなかった可能性がある。
衝動的・反社会的傾向は『線条体』が大きさと、ドーパミン放出回路の報酬予想に関わる『側坐核』の脳活動の増加と強く相関している。
また、線条体の活動は、社会的・道徳的意思決定・恐怖学習・共感的反応に関わる『腹内側前頭前野』によって制御されるが、その結びつきが弱い。
サイコパスの脳内で何が起こるのですか? - JAMedBook
刑務所の受刑者の脳を測定した結果、サイコパスの精神病質レベルが高い受刑者ほど、脳の『腹側線条体』という領域が活発で、すぐに報酬をもらう選択をする傾向にあった。
また『腹側線条体』と『腹内側前頭前皮質』という別の領域とのつながりが通常よりかなり弱いことも判明した。腹内側前頭前皮質は”精神の時間旅行”、すなわち行動の将来的な結果について考える能力に関連する領域だ。
これらの発見は、サイコパスの反社会的行動が、彼らの脳が目先の報酬を過大評価し、同時に将来的なコストを無視してしまうことに起因すると示唆している。
「サイコパスとされる個人の意思決定パターンは、薬物の乱用・過食・ギャンプル依存症といった自己破壊的行動をとる人々のそれとそれほど変わりません。サイコパスになるかどうか分けるのは、感情の欠陥といったことかもしれません」とバックホルツ氏。
阿部修士特定准教授らの研究グループは、機能的磁気共鳴画像法と呼ばれる脳活動を間接的に測定する方法と、嘘をつく割合を測定する心理学的な課題を使って、正直さ・不正直さの個人差に関係する脳の仕組みについて解明しました。
世の中には正直者と嘘つきがいるが、どうして個人差があるのか。
報酬を期待する際の『側坐核』と呼ばれる脳領域の活動が高い人ほど嘘をつく割合が高い。さらに、側坐核の活動が高い人ほど、嘘をつかずに正直な振る舞いをする際に『背外側前頭前野』と呼ばれる領域の活動が高い
どうして正直者と嘘つきがいるのか? -脳活動からその原因を解明-:京都大学
自分は平均より優れていると思う「優越の錯覚」は『前部帯状回』と『線条体』の“機能的結合”の度合いと相関関係にある。
・機能的結合が弱いと、優越の錯覚は強い
・機能的結合が強いと、優越の錯覚は弱いそして、この機能的結合は、線条体のドーパミン受容体密度に依存している。
「自分は平均より優れている」と思う心の錯覚はなぜ生じるのか—脳内の生物学的仕組みを世界で初めて発見—:JST
www.jst.go.jp以上などのことから
サイコパスは、脳の『報酬系(線条体・即座核)』と『前頭前野・前部帯状回(抑制機能)』の関係(バランス)において、『報酬系』の増大・暴走と『抑制機能』の機能低下がある。
そうなると、
・迷惑行動を注意されたら、すぐにカッとなって相手を攻撃する。
・自分が侮辱(否定)されたと感じたとき、暴力に走る。(煽り運転・体罰・虐待)
・不正が発覚したとき、すぐに嘘をつき、証拠を隠蔽・廃棄し、責任逃れをしようとする。
・何か問題が起き、うまく行かないと、「自分は悪くない。悪いのは他者である」 と攻撃的になり、他者に責任を被せようとする。(他責思考)
・「自分は正しい、間違わない」という『優越の錯覚』が強くなる。それが、日本批判に対して、「日本は悪くない、悪いのは外国だ!」「日本を貶めようとしている。日本人ヘイトだ!」となる。
ここから分かるのは、自信満々で饒舌で「優越の錯覚」が強い人ほど、平気で嘘をつける傾向があり、その背景には『前頭前野・前部帯状回(葛藤)』の機能低下がある。
またそれが、人が「保守化」する原因ともなる。
人は、自分の行動を正当化するあまり、責任を相手に押し付け、激しく相手を攻撃しようとする
そこでは“受験競争”の中で勝ち残っていったエリートが、権力者や組織を守る為に平気で嘘をつき、不正を働くようになる。
参考)
けろっち
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